住宅業界で家造りについての知識や技術を学ぶと自分が培ったものを使って、新築を検討している人達へアドバイス出来ることに意義を感じる事も多いと思います。
しかし、家はあくまで暮らす人が幸せに過ごす為にあるべきで、主役は『人』です。
そして新築する人の多くが『家族』で幸せに暮らす場所を求めております。建築技術者としてお手伝いすることは何か?幸せな家造りについて考えてみました。
家造りの思いと予算と工夫
新築する人の多くは、多額の自己資金と毎月支払える住宅ローンを細かく検討して建築費の予算を捻出します。家族と幸せに暮らす日々を思い、何十年もの支払い続ける住宅ローンの覚悟を決めて契約書に捺印します。
もちろん建築費の予算は人によって違うし、趣味や家族構成、生活スタイル、敷地条件も異なります。家はそれぞれの家族の暮らし方に合わせた計画を行うことで、満足感が増したり幸せを感じる事が増えるものだと思っております。
例えば、居心地のリビングを考える
居心地の良いリビングを作れば自然と家族が集って過ごす時間が増えるため、家を建てた事に満足感や幸福感を感じるでしょう。しかし居心地の良いリビングとはどのようなリビングなんでしょうか?
・日当たりが良い事
・冬場に暖かく過ごせること
・夏場に涼しく過ごせること
・風通しと人通り
・落ち着くレイアウト(TVと窓の配置)
・玄関から各部屋に入る時リビングを通る間取り
・家族の繋がりを感じる間取り
日当たりが良いこと
南面が最も日当たりが良いことは常識ですが敷地条件は様々です。隣接する宅地や道路の条件ひとつで間取りは大きく変わります。隣接する宅地(南面)に住宅が立っていたらどうでしょうか?

周辺に何も無い敷地であれば自由な間取りが可能ですが、普通の宅地は日当たりの良い敷地は人気で早期に売れてしまいます。値段も高いため予算的に手が届かない事もあるでしょう。
工夫とは、それぞれの敷地にとって最も日当たりが良い場所を読み取って間取りの骨組みをする事です。日当たりを工夫することは新築時しか出来ないことです。
冬場暖かく、夏場涼しく過ごす方法
家族が多くの時間を過ごすリビングは、快適な環境を整えることが大切です。もちろん冷暖房の設備があれば温熱環境は整いますが、実は南側の窓を効果的に計画することで室内の環境は大きく変わります。

それは季節によって変わる太陽高度を考慮して計画することです。初めて家を計画する人はなかなか気がつきにくい部分でもあります。
自然の力(太陽の恵み)を最大限に活用することでリビングの快適性は全く異なるものとなります。
風通しと人通り
風鈴の音を聞くと少し心が穏やかになりませんか?夏や冬ではエアコンを使用して温度調節をする事が多いのですが、春や秋の中間期や夏で朝方等は、窓から入ってくる爽やかな風が癒やしてくれます。
例えば日当たりを気にしすぎて南面に大きな窓を計画したとしましょう。もし、人通りの多い道路が南面に接道していた場合、南面の窓を開けて風を感じたいのですが人通りが気にななります。視線まで気になるとせっかく大きく設けた窓をカーテンで閉めて生活する事になります。
リビングは日当たりだけを考えるのではなく、外部の環境を考慮して植栽や外構の工夫を考えて置かなければ窓を開けて風を感じる事が出来なくなります。
南面に大きな窓が無くても、縦すべり窓を上手く配置すればウィンドウキャッチの効果が得られるため爽やかな風を室内に取り組むことも可能です。

画像出典:LIXIL公式HP(ウィンドウキャッチ)
落ち着くレイアウト(TVと窓の配置)
リビングには必ずTVの存在があります。ここで注意が必要ですが、リビングをTVを見るための空間として計画するとソファーはTVに向けて配置されます。せっかくの設けた窓を背にして景観を楽しむ事が出来ないレイアウトになることもあります。

玄関から各部屋に入る時リビングを通る間取り
玄関から各個室へ移動できる動線計画ではなく、リビングを通ってから部屋へ移動する間取りにすれば家族が顔を合わせる機会も増えます。建築費の予算にもよりますがりビング階段を設けると開放的な空間となり、家族の顔を合わせるきっかけにもなるのでおすすめです。
しかし、リビング階段は上階への吹き抜け空間となる為、快適性を損なう事があります。上下温度差を考慮した計画が必要になるでしょう。


画像出典:カツデンアーキテック
家族の繋がりを感じる間取り
リビングで集まるだけでなく、リビングにいながら家族の繋がりを感じる間取りも工夫のひとつです。1階と2階の間に中間階を設けてスキップフロアなんていかがでしょうか?間取りの工夫ひとつでワークスペースとリビングを上手く繋ぐ事が可能です。


画像出典:タマホーム公式HP
まとめ
住まいへの思いはそれぞれです。家族の幸せな時間を作るため、主役となるのは人ですが家造りを工夫することで暮らし方や過ごし方、満足感や幸福感は変わってくると思います。
住宅会社などの作り手の思いが強すぎたり、ハイスペックな商材を導入したり、高級感のある意匠性を追求するだけでなく、あくまで建築費の予算内で出来る限りの事を提案できる事が大切だと思っております。

木造住宅の仕様や施工、品質について記事にしてます。一級建築士/一級建築施工管理技士/宅建士